カードローン

dropout
 

毎月2万払ってもリボの場合、全然減らんよ。

ある日、友達が言いました。

 

前回の続き

 

恩ある職場を退職をしました。

こんな僕に勿体ないような送別会がありました。可愛い雑貨のセットまで頂戴しました。

なんで辞めるんだろう?とさえ思ったほどです。

明日から朝や帰りの電車の時間も気にせずに済む。コンビニ生活や外食生活から抜け出せる。

冷蔵庫には生鮮食品が一つもないようなことはこれからは無いのだ。

 

そんなことの方が大事に思えていたのでした。

 

そのため、とりあえずのリセットボタンを押すことだけが目標だった僕は

次の行き先のアテは当然何もありませんでした。

残されたのは、借金だけ。

 

でも、また働いたらすぐに返せる。それまでの辛抱だ。

と気楽に考えようと自分自身に言い聞かせ、誤魔化していました。

 

 

送別会の前日にコンビニで新たなカードを発行しました。

それは銀行系消費者金融のはしりの会社のカードでした。

僕は、万が一に備える意味で雇用されている間に、新たなカードを作ろうと申請発行したのでした。

コンビニに設置されたATMの隣にある機械にカードを投入し、残高を確認しました。

出勤可能な額を確認してカードを抜き取りました。

残高が示されると、まるで自分の預金のような錯覚に陥り妙な安心感を感じました。

(この感覚はとても危険なものだと後々分かることになるのですが。)

 

このカードは最後の砦、決して簡単に使うことがないように。

と、自分に言い聞かせました。

 

平日の昼間に生鮮食品を買い、アパートの洗濯をし、掃除をしました。

時計を見ると10時半でした。

今頃はあんな感じで仕事をして、こんな感じで、とついそんなことを思ってしまいました。

 

近所のレンタルビデオ店で映画を借りて観ました。それが終わるとHMVに行って最新の音楽事情に触れようとしました。

僕は3年ちょっとの間にいろいろな流行や話題から切り離されてしまったように感じていたのでした。

それを埋めようと、書店やカフェも巡りました。

そんな時間はすぐに飽きてしまったのでした。学生の頃のような感覚には全くなれなかったのでした。

 

気がつくと平日に仕事をしていないということは、とても恐ろしい気分でした。

世間から隔離された気分になり、徐々に何とも言えない不安感がこみ上げてきました。

 

そこで職業安定所、いわゆるハローワークへ行くことにしました。

ハローワークはどこか何とも言えない空気感で、いち早くこの場所から抜け出たい、そう思いました。

失業保険の手続きをして、それから求職票を閲覧しました。

望んでいるような職業や待遇などは全くありませんでした。

大阪まで通う時間が苦痛に感じられていた部分があったので

次は京都で、しかもデジタルっぽくない仕事がいいなぁ、でもネット関係も興味があるなぁ

と、また現実を見ていない悪い癖が出て妄想をしていました。

 

そして瞬く間に退職1カ月目、早くも金銭的な危機が訪れる気配がしました。

そのため、僕は極限まで食費を減らすという作戦に出ました。

しかし、そのおかげで体力が落ち風邪を引く結果になりました。

健康保険証がないことに気づき区役所へ行って手続きをしました。

 

各種支払いの日がやってきました。

 

とりあえずの手元の現金をかき集め支払いを済ませました。

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そして、本当に手元には何も残っていない状態になったのです。

リボ払いが残っているカードでとりあえず2週間ほど生活できるだけのお金をキャッシングしました。

そして、お金を見てホッとしました。

自分のお金では無いにも関わらず。

 

日に日に冷蔵庫の中の生鮮食品のストックがなくなっていきました。

そのため、僕は求職活動をしながらたまに友人の家へ転がり込んだりして

なんとか食いつないでいたそんなある日のことでした。

クレジットカードの話題になってキャッシングの話のさわりだけ言いました。

 

突然、冷静な口調で友達は言いました。

 

毎月払ってもリボの場合、全然減らんで。

 

そうだね、と相槌を返しました。

 

40万借りても1万ずつ返しても当然40か月という訳にはならんしな。

1万円ずつ払っても手数料払って、残高減ったら支払額低くなるから、また期間伸びるで。

ざっくり計算して、せやなぁ

 

40万なら返済は7年半くらいかな。利息は14万くらいかなぁ。」

 

と言いました。

僕は、7年という時間に呆然としました。

 

思わず、「無理や。」と、言いました。

彼は続けて言いました。

「カードローンに変えたらええねん。金利が低くて支払い期間も短くできるで。」

 

それは、送別会の前日に手にしたあのカードのことでした。

胸がドキドキしてきました。

僕がそのカードを既に持っていることを、彼に見透かされているようでした。

まるで悪いことを隠しているようなそんな気分になりました。

妙にべたついた汗が流れた時、彼の口からトドメのセリフが投げかけられました。

 

借りかえたらええねん。

 

ん?

だから、借りかえたらええねん。

 

真空状態の頭に覆い被せるように彼は言いました。

 

 

 

 

俺も借りてるで

 

悪魔の囁きにしては優しすぎるトーンで。

 

続く

 

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木村
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めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。