派遣社員

 

前回の続き

 

ついにカードローンに手を出してしまいました。

まるで何かから隠れるようにコソコソとATMで400,000円を引き出し

誰にも見つからないように逃げるように立ち去りました。

変な高揚感が僕を支配し、どういう経路でどうやって帰ったのかわかりませんが

次に気づいた時には銀行ATMで300,000円を入金しました。

 

手元に10万、口座に30万。

 

そう考えると、なぜか落ち着いてきました。

口座にお金があるということが安心感を芽生えさせました。

 

自分のお金ではないのにも関わらず。

 

ひと月あたり3万円払ったら何とか1年で支払い終えるだろう。

そんな風に簡単に考えて、全く計算などしませんでした。

なぜか根拠もなく1年ちょっとで完済できる、40万円なんて容易い。

そんな風に思っていました。

 

 

 

そして、電気会社へ行き電気の再開の手続きをしました。

窓口の人と喋っただけで、少し社会とつながっているような

そんな感覚を取り戻しました。

 

とにかく働かなくてはいけない。

 

ようやく明るい部屋が戻ってきました。

少しホッとしました。

 

友人の紹介でアルバイトをしても、そんなにお金になるわけではなかったので

とにかく時給が良さそうな仕事を探すことにしました。

もはや、過去自分が思い描いていた理想や夢などは遠くに葬られていました。

仕事の不満や会社での不満などは、その場所があってこそ生まれる贅沢な悩み思えていました。

 

本当にやりたいことってなんだろう?

本当にしたい仕事ってなんだろう?

 

そんな思いがずっとどこかに刺さったままでしたが

より報酬が良さそうな条件を求めそんな思いは遠くに押し殺すようにしました。

 

ちょうどその頃、派遣社員が理想的な働き方のようにテレビCMがガンガン流れていました。

 

まるで今の働き方改革を囃し立てるような感じです。

 

すっかり頭の中を洗脳された僕はまんまと登録することにしました。

 

早速、登録説明会へ四条烏丸のビルの一室へ行きました。

登録手続きを済ませ、適性検査、エクセルやワードの基本的な操作ができるか?

などのスキルチェックなどがあり、キャリアカウンセリングの人との面談になりました。

キャリアカウンセリングの人は、これまでの経験を聞いてきました。

僕は、仕方なく今までのことを伝えました。

 

そして、キャリアカウンセリングの人は

 

一番、経験として長いのが最初のデザインのお仕事ですよね。

これに近いお仕事をご紹介できるようにしますね。

ご希望の条件などはどうですか?

入力などがメインですが、会社としてはデザイン案件もやってらっしゃるので

これからのことを考えると、この辺りの職種から続けていただいて…

紹介予定派遣なのでいいとは思います。

 

入力…

 

続けて…

 

カウンセリングの人の言葉が、わずかに残った自尊心を甚振りました。

僕にとってのNGキーワードでした。

 

いまさら同じような畑で、しかも自分の評価を下げてまでして働くなんて。

そう思うと、多少のキャリアを積んだ20代半ばの男とは思えないような

そんな情けない感じで、こう答えました。

 

京都で働けてお金が良ければいいんです。

 

そして事前にサイトで確認していた仕事を紹介してもらうように

キャリアカウンセリングのお姉さんに伝えたのでした。

 

その仕事は、デザインも何もかも全く関係のない仕事でした。

 

翌週、スタッフの人とともに移動しました。

事前に見ていた仕事を紹介してもらうためでした。

 

巨大な建物が目の前にありました。

 

中へ進み、エレベーターに乗り、会議室のような場所で説明を受けました。

ニュースで見たことがある創業者の写真が飾ってありました。

 

そこではサービスの品質や会社の理念などめまいがするほど教えられました。

 

既視感が襲いました。

続けられるのか?否、返済のためだ。

できるのか?否、返済のためだ。そう言い聞かせました。

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そこには数々のトラックがありました。

京都府内の荷物の集荷などを一手に引き受け、絶えず電話が鳴り続けるコールセンターでした。

 

僕は白と青のシマシマのポロシャツを制服として支給されました。

 

いきなり業務が始まりました。

先輩の派遣社員の女性が説明を3分程度して、その場から去りました。

 

どうやら休憩に出たようでした。

 

コールがかかると周りの他の女性たちに早く出るように促されました。

 

急いで出ると、電話口のお客さんはとても早口で

 

「3個口、できてるで、いつも場所とちゃうねん、裏に来て!」

 

そして電話を切られました。

4分前に説明を受けた通り、メモを残さなくてはいけない。

 

電話口の相手が伝えた情報を端末に残してドライバーに伝達しなくてはいけないのでした。

 

そうしている間にまた次のコールがかかりました。

 

「***群+++++町の・・・で、また取りに来て。」

 

聞いたこともない地名の、どこの誰が、何を言ったのか

何を伝えようとしているのか、一つもわからないまま電話は切れました。

 

30分ほどして先輩の派遣社員の女性が戻ってきて言いました。

 

「どう、簡単やろ?」

 

お金を返すこと、借金を減らすこと

そして、働くこと。

 

それはとても難しいことでした。

 

僕は白と青のシマシマを数日着用しただけで

ポロシャツを脱ぐことにしました。

 

こういう理由をつけて。

 

自分には似合っていない。

 

借りた40万の内、手元の10万の残りはもうわずかでした。

 

口座にある残りはリボ払いと家賃など生活費に充てなければなりません。

頭の中で簡易な計算をしました。

この状況であと、どれだけ耐えられるか。

次の支払日までに収入がなければまたその分苦しくなる。

働き始めてもそれが手元に入ってくるまでのタイムラグ。

それによって生じる損失。

正確な答えを出そうとすると思考停止しました。

 

 

 

面倒くさくなったのかもしれません。

ただ、わかっていることは一つだけ。

 

またすぐ別の働き口を探さなければ。

 

またもや四条烏丸のビルの一室に行くことにしました。

駆け込み寺のように縋ったのです。

誰かに生き方を委ねてしまいたい。

働き場所も決めてもらいたい。

そんな風に思っていたのかもしれません。

 

自信喪失で思考停止でした。

 

 

カードローン返済はスタートしたばかりでした。

 

まず3万円を返済に充てました。

 

残金を見て驚きました。

37万6千円も残っていました。

ショックでした。

 

3万円のうち、本来返さないでいいお金が6千円も取られているなんて…

 

続く

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木村
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めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。