
「ドラムが叩ける学生力士」が、まわし姿でミュージシャンデビューしちゃった。
それがちゃんこぽんちーです。
ちゃんこぽんちーの活動よりも、相撲との向き合い方についての話がメインになっていますが、良い話なのでそのまま掲載。
前回から1ヶ月以上たってますが、後編は「相撲部屋に入門したときの心の話」と「ちゃんこぽんちー復活」、そして、「ちゃんこぽんちーのテーマパーク計画」です。
インタビューしていて、こんな展開になるとは思わない壮大な物語が語られました。
お願い読んで!
<前編はこちら>
僕としては、割と真剣にロックバンドをやってるつもりだったのですが、ライブでは不思議と笑いが起き続けるんです。
—ちゃんこぽんちーとしては、どんなイベントやどんな場所で活動をされてきたんですか?
ちゃんこ:初めてのライブは廃校となった校舎が多目的に利用されていた、立誠小学校でのイベントでした。
それからは、地域のお祭りに出たり、ライブハウスやお寺のイベントに呼んでもらったり。
自分たちでもライブをしようということでちゃんこ鍋ディナーショーを開いたり、鴨川デルタで野外ライブをしたこともあります。
自主開催のライブではいつも合間に四股教室を挟んだりしてましたね。
—お客さんの反応はどんな感じでしたか?
ちゃんこ:僕としては、割と真剣にロックバンドをやってるつもりだったのですが、ライブでは不思議と笑いが起き続けるんです。
でも別にそれが不快かと言ったらそうじゃなくて、これはこれでありだなぁって感じてました。
いつしか笑いを欲してる自分さえ居ました。
—笑ってもらうことに快感を感じはじめちゃった!笑
ちゃんこ:でもいざそっちに寄せようと笑いを狙いにいくと取れない。
大真面目に尋常じゃないことを笑われるのが得意なんですね。
そしてこんなにウケがいいのも京都だからこそやと感謝してます。
—ですね。ちゃんこぽんちーは京都的だと思います。他に京都でちゃんこぽんちーのような活動をしてた人を知ってるとかはないんですけど。なんとなく京都っぽい魅力がありますよね。
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーは、パフォーマンスのクオリティとしてはそんなに高くないし、歌も音痴だし、ドラムも下手。
間の取り方もなんだか微妙でライブとしてもくだぐだになることも多々ある。
そんな感じだったのに、僕らの、わけわからんパフォーマンスを楽しんでくれるのが、本当にありがたかったです。
—忘れられない思い出のライブってありますか?
ちゃんこ:ようやったなぁ、結果的に伝説みたいなライブになったなぁって個人的に思ってるのは、吉田東通の夜市という朝から晩までやってるお祭でのライブです。
タコ焼き屋の「タコとケンタロー」のタコケンさんが、発起人となって始まったお祭で、相方の柴山(ぽんちー)は出町柳の町内会長をしておりましたので、隣町のお祭には協力せねば、と交通整理などの実行役員をしてました。
自分の手でたくさんのスタッフを集めて、メンバーの取りまとめもしつつ、ちゃんこぽんちーとしてのライブもする。
でも当日、なんと柴山は高熱を出してしまいフラフラでした。
—あらら。
ちゃんこ:しかもあろうことか雨まで降って来た。
夏でしたが、雨の降る夜に裸でライブをするなんて。
柴山さんには、僕1人でやるから、実行役員だけ務めてくれって言ったんですが、それでも柴山さんはやるって言って。
結局腰痛用の痛み止めをドサっと飲んで、熱を下げ、強行出場。
雨の中、まわし一丁で歌って踊る、伝説のライブが生まれました。
—ありがとうございます。おもしろエピソードをいただけると思っていたら、ものすごい良いお話を聞かせていただきました。
ちゃんこ:でも、ちゃんこぽんちーで柴山さんの体が壊れるのあかん。
これからは、無理せんといてほしいです。
柴山さんは色んなところで多くの人と関わって生きているので、いったん倒れると色んな人が困るんで。
—相方への愛の物語ですね。
ちゃんこぽんちーをはじめたからと行って、相撲部をないがしろにするつもりはなかった。
—大学卒業後に相撲部屋に入門されたそうですが、ちゃんこぽんちーとしての活動はどれくらいされていたんでしょうか?
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーは、2013年2月20日に出町柳にて結成しました。
大学2年の終わり頃から、卒業までですね。
—2年ちょっとなんですね。
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーの活動をしながらも、ずっと相撲部の部員も続けていて。
調子が良いときは試合にも出たりしてました。
—なるほど。
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーをはじめたからと行って、相撲部をないがしろにするつもりはなかった。
高校の終わりにドラムを始めて、せっかくドラムが叩けるから、何か音楽活動はしてみたいなって思っていたのはあって、相撲以外に何かないかと思ってたんです。
—そこで、リュウさんとの運命的なレコーディングがあったんですね。
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーをはじめた頃は、かなりヘルニアが悪化していて、稽古は原則顔を出してやれることはやるようにはしていたけれど、思うようには動けないのがすごいストレスで。
—鬱々としてたんだ。
ちゃんこ:そんな時にリュウさんに声をかけてもらって、レコーディングをさせてもらうことができた。
お医者さんもストレスは良くないって言わはったし、せっかくのチャンスやし、思いきってバンドをやってみてようかと思って。
ただ、ドラムを叩くということが腰への負担になるかもしれないって言われたので、そこからボディーパーカッション、ひいてはまわしパーカッションが生まれました。
—そうやって、ちゃんこぽんちーがはじまったんですね。
ちゃんこ:はい。
相撲競技に復帰する姿勢は崩さずにやっていました。
大相撲に入ったのは、自分が相撲から卒業するためのイベント。
—大学を卒業されて相撲部屋に入門されたんですよね。
ちゃんこ:はい。
—腰の調子は良くなったということでしょうか?
ちゃんこ:ヘルニアの治療をいろいろしてみたんですけけど、日常生活とか軽く稽古はできるんやけど、ウエイトトレーニングとかをしちゃうと痛みが出ちゃう。
手術せずに治すのが一番やったんやけど、痛みが出るから踏み込んだ稽古ができなかった。
やっぱり相撲が諦めきれなくて、ダメ元で大学3年生の10月ごろに手術をしたんです。
—ヘルニアの手術をされたんですね。
ちゃんこ:手術をしたことで、4年の後半くらいには、試合に復帰できるまでに回復しました。
手術が成功した後も、やっぱりどこか、おっかなびっくりやってるところはあったんですけど。
—私もヘルニアの手術をしているのでわかります。
体が痛みを覚えているので、やっぱり動かすのって怖いですよね。
ちゃんこ:大学4年の11月に両国国技館でインカレがあって。
それに向けて9月くらいから、割と問答無用で稽古したんです。
あと3ヶ月で相撲をやめることになるかもしれへんと思って。
このままやと、悔いが残るなって。
日常生活できてるんやから、体壊れるか、いい感じで仕上げれるか、かけてみようと思って。
それまで控えていた、ウエイトトレーニングもがんがんやったりしました。
—はい。
ちゃんこ:久しぶりにちゃんと準備して迎えた試合だったので、嬉しくて。
付け焼き刃なので、結果がものすごく出るわけでもなかったんだけど。
—ようやくきちんと相撲をとることができた。
ちゃんこ:はい。
楽しかったです。
多少力も戻ったなっていう感じがして、掴み始めたかなっていうところで、終わりかと。
6歳から相撲をしてきたので、このまま終わるのは違和感があるなと。
逆に19年やっちゃってるから、自分に伸び代を期待しているわけじゃないけど、もうちょこっとだけ、やり残しがあって。
力士として大成できると思ってたわけじゃないけど、もう少しいける気がしたんです。
—それで、大学卒業後に相撲部屋に入門されたと。
ちゃんこ:大相撲に入ったのは、自分が相撲から卒業するためのイベント。
受け入れる側からしたら、入るからには関取目指してがんばらんかいっていうところがあると思うんですけど、僕は自分勝手に、自分でやりきるためだけに相撲部屋に入ったんです。
相撲を思いきってやらしてもらうための時間をもらうのは大相撲しかないって思って。
社会人相撲や、趣味で続けるというのは、自分の中ではしっくりこなくて。
それで、3年って決めて入門しました。
自分で最初に決めた3年というのを満了するのが、自分の中ですっきりポイントやったんやなと思います
—そして、つい先日帰って来られたんですよね。
結局相撲部屋には、3年間おられたんでしょうか?
ちゃんこ:結局2年半いました。
あと半年で3年経つし、僕の中ではこれ以上延長してやるっていう可能性を感じなかった。
入門する時に、最初から3年だけって親方にも伝えていたんですけど、3年で終わらせてもらえなくて、強硬手段で脱走したんですけど。
—やりきれましたか?
ちゃんこ:イメージとしては、最初に3年というのを決めといて、後半は自分と向き合った時の感覚を大事にしようと思っていて。
無理してあと数年引き伸ばせばワンチャンスあるかなって思ったら、もうちょっと続けたらいいと思ってたんやけど、今ここでやめたら清々しく次に行けるなと思うんやったら、そこでやめればいいと思って。
結局は後者の方やった。
—2年半相撲に打ち込んで、スッキリできました?
ちゃんこ:はい。
もう大丈夫やなと。
もうちょい思いきって相撲しとけばよかったって思ったりすることは、もうないと思います。
1年くらいたったときに、割と満腹感はあったんですけど。
ここで辞めるのはへんやなと思って。
番付も満腹感と裏腹に、ある程度あげさせてもらったりして、続けてるだけいいことはあったんですけど。
—はい。
ちゃんこ:逆に言ったら、自分で最初に決めた3年というのを満了するのが、自分の中ですっきりポイントやったんやなと思います。
今やめて思うのは、ちょうどよかったなと。
しんどくなりはじめた時期にやめてたら、腰掛けただけで終わってしまう。
単に入門して、帰ってきただけの奴になる。
自分の中で決めた3年間という期間、まあ実際は2年半ですけど、打ち込んできたので、自信を持って相撲会で頑張ってきたって言えます。
相撲教室をはじめたんです。自分が人の役に立てることってやっぱ相撲やし。
—相撲を引退して、これからはちゃんこぽんちーとしての活動を再開して、力を入れていくという感じなのでしょうか?
ちゃんこ:次の何かをやるための地盤を作るために、国内いろんなところにちらばってる、知り合いに会いに行こうと思っています。
ほぼ貯金もないので、まずは働こうと思って。
—仕事をしてお金を貯めながら、やりたいことを探すための準備をしているという感じでしょうか?
ちゃんこ:ちゃんこぽんちーを見ていてくれた、まちづくりの仕事をしている人が、バイト先を紹介してくれて、今は「坂ノ途中」という野菜屋さんで働いています。
相撲で生きてきてると、食べることとか、ただのトレーニングでしかなかったので、健康になりたいなと思っていたので、まかないも野菜つかった料理を食べれるし、めっちゃいいなーと思ってます。
最初に社長の小野さんにお会いした時に、米袋とかも運ぶ仕事で、筋肉を欲してますって言われたので、筋肉が生かせてる。
すごい役に立たせてもらってるなっていう実感があって幸せです。
—いいですね。
ちゃんこ:仕事以外でも何かしたいなと思って、相撲教室をはじめたんです。
自分が人の役に立てることってやっぱ相撲やし。
きっと、相撲したい人もおるやろなって。
導入は相撲でもいいけど、単純に競技者として体のことをたくさん考えて生きてきた中で、いろんな健康につながるような話とかできるかなって思って。
—いいですねえ
ちゃんこ:糺ノ森のイベントに来ていた人に、しこを踏んでもらった。
一般の人にも相撲を身近に感じてもらえたらいいなと思っています。
—相撲教室はどこでやるんですか?
ちゃんこ:しばらくは出町柳のナミイタアレ横にあるDBC(出町柳文化センター)でやります。
暖かくなってきたら、公園とか実際に土俵を借りたりして、本物の土を踏む醍醐味を味わって欲しいです。
具体的には、毎週土曜日、10時半から11時半の1時間で、1500円。
—どんなことをするのでしょうか?
ちゃんこ:最初の15分くらいは座学で、相撲の文化的な話、歴史や成り立ちなどをしたり、健康作りにつながってくるスポーツ的な話をして、後半で実際に身体を動かしていきます。
相撲の基本動作を通じて健康増進プラス、日本の伝統文化である相撲に玄人目を持っていけたり、親しんでいけたりするといいなと思っています。
毎週通うお稽古事というよりは、たまにメンテナンスとして来て、あとは四股(しこ)など、相撲の基本動作を各々で習慣化して日頃の健康増進に役立ててくれたら嬉しいなって感じです。
整体に行くくらいの頻度で来てくれたら嬉しい。
実際に整体も仕事にしたいなっていう準備もしてたりするんですが。
—どうやったら、参加できるんでしょうか?
ちゃんこ:毎週土曜の10時半から11時半と決めたので、「ちゃんこぽんちーの相撲教室」というフェイスブックページに直接メッセージをいただければと思います。
—予約なしで、直接DBCに行っても参加は可能でしょうか?
ちゃんこ:はい。飛び入りできていただいても大丈夫です。
場所が分かりづらいのはごめんなさい。
看板とか出せるように頑張ります。
町家を利用して、観光客向けに相撲のテーマパークみたいなのをやりたい
—今後のちゃんこぽんちーの活動予定を教えてください。
ちゃんこ:僕が相撲部屋から帰ってきた時、柴山さん(ぽんちー)は、体もボロボロやし、ちゃんこぽんちーはダメージが大きすぎるから、やらへんよって言ってたんです。
柴山さんがやっと自分の体のこと考えてくれるようになったかと、ほっとしました。
その頃は、僕も呼ばれたらやるかくらいのテンションで活動をしてた。
で、1人でちょくちょくライブに出て、ライブ出演がてら相撲教室の宣伝をしてたんです。
でも最近になって、柴山さんにまた火が着きだして、体が悪くてもやれることはある!と奮起してくれて。
—お2人でライブ活動に本腰を入れていく感じでしょうか?
ちゃんこ:清水五条文化センターっていう、好立地にある町家を利用して、観光客向けに全ての体験を詰め込んだエンタメを作ろうと思ってます。
もう色々構想は練り出してて、大袈裟に言うと相撲のテーマパークみたいになりつつあります。
—え?テーマパーク?ですか??なんか唐突ですね。
ちゃんこ:町家で相撲の歴史や文化、健康的に効能を学び、実際に四股を踏んだりして体で感じて、ちゃんこ鍋を一緒に作り、ちゃんこをあてに一杯やりながら、相撲甚句(すもうじんく)を始めとする僕らのディナーショーをやろうと思っています。
学んで、動いて、作って、食べて、観て聴いて。
ね、全部詰め込んでるでしょ。笑
これを1つの生業として成り立たずことができたら面白いなと思っていて、柴山さんも貸し自転車だけだと寒い時期は利用客が減ってキツいけど、これなら!って燃えてます。
でお金稼ぎが下手くそであろう、僕と柴山さんに加えて、新メンバーが加入しました。
デザインや、料理の仕事で、自営していて、冷静に考えてくれる、ケイタさんという人です。
この人が入ったお陰で、僕らの夢想は、グッと現実味が増していて、ますますワクワクさせてもらってるところです。
—すごい。ちゃんこぽんちーという名前は、バンド名からプロジェクト名になってますね。こんな展開になっているとは…。めちゃくちゃ楽しみです。
相撲は国技でありながら、珍しいものであり、知ってるようで知らないことが多々ある
—今後のちゃんこぽんちーの活動予定を教えてください。
ちゃんこ:今の僕個人が持つ基本的なコンセプトは、「相撲をもっと身近なものに」です。
相撲は国技でありながら、珍しいものであり、知ってるようで知らないことが多々ある。
もっと人々にとって相撲が身近なものになって、生活に根付いた文化になってほしいと思ってます。
子どもの校庭遊びに昔みたいに相撲があってもいいし、日頃の手軽な運動として相撲があってもいい。
娯楽としての相撲も、相撲の文化的背景や、ちょっとした技術的な知識があるとより楽しめたり、とかですかね〜。
—うんうん。
ちゃんこ:僕がすごい相撲を愛してて、どうのこうのってよりも、これまでの時間ほとんど相撲をしてきた自分にとっては、すごく当たり前なあった相撲を珍しがられることが多いこと驚いて生きてきました。
え?相撲って国技って言われるのに、え?って。
—そういや私も、相撲をしている知人とかまわりに全くいません。
ちゃんこ:伝統文化として、ひと昔前の文化をそのまま残し、その情緒を楽しませてくれる大相撲があって、それが貴重なもので、本物はあそこでしか見れないっていうベースがありつつも、生活のそこかしこでは身近だよねっていうのが、ええなって思ってます。
なので、この想いに準ずるように活動していけたらなぁって思います。
ただあと2人のメンバーの想いもありますので、想いを擦り合わせながら頑張っていきます。
—楽しみにしています!
ちゃんこぽんちー関連リンク
<ちゃんこぽんちーのプロジェクト予定地「清水五条文化センター」>