シンドローム

dropout
 

前回の続き

鳴らない電話は滞納のせいでした。

 

どうしてその事に気付かなかったのか?

それも今となっては信じられないくらいです。

悠久の時の中で太陽を眺めながら暮らしていたのか?と問われれば

別にそうではなく、ただひたすら業務に追われていただけでした。

そして、忙しくなると悪い病気が出てくるのでした。

 

それは、

『自分を思いっきり甘やかしたくなる病』

という病気でした。

 

またの名を

『自分へのご褒美症候群(ご褒美シンドローム)』

 

海鮮丼

 

ともいいます。

一度発症すると、取り憑かれたように美味しいものや楽しい出来事や物欲が止まらなくなる…

要するに、一時の快楽に流されてしまうという恐ろしい病気でした。

 

また、その頃同時に

『まっすぐ家に帰れない病』

という治療が難しい病気も併発してしまったのでした。

 

これは、おひとりさまでは飲食店に入れないという症状の真逆に位置する

とても恐ろしい病でした。

 

この病気の恐ろしいところは、一旦発症すると癖になって

ついつい連日寄り道をしてしまうというところでした。

 

そうしているうちに

『一人じゃ楽しくないね病(別名:誰かと喋りたい病)』

も患ってしまいました。

 

その当時はまだFacebookがアメリカで産声を上げたかどうかくらいの時期で

インターネットが世界を変え始めたと言ってもまだそよ風程度だった頃

SNSという言葉もまだ誰も聞いたことがない、そんな時代。

 

それらの病を併発してしまった僕は、誰かと繋がりたくて繁華街をあてもなく徘徊しました。

そして、食べても飲んでも遊んでも満たされない。

しかし欲求はますます大きくなるというとても恐ろしい状態に無自覚だったのでした。

 

そして誰かと繋がりたいなどという願望を持っているのにも関わらず

実のところ電話は止まっていたのでした。

 

そんな状態の僕だったのですが、いよいよ差し迫る期日を目前に

支払いの優先順位を決めていくことにしました。

そして、頭の中で大体のイメージでこんな風に決めました。

 

  1. 税金

  2. 健康保険

  3. 携帯の再開

  4. リボ払い

  5. 家賃

  6. カードローン

  7. 電気代など

 

支払わなければならない日程から順番にざっくりと書き出すべきでした。

 

 

完全に間違っていました。

 

 

すっかり慌てていた僕は、優先順位の設定をミスってしまったのです。

 

せめて、こんな順位にすれば良かったのです。

 

  1. カードローン

  2. 税金

  3. リボ払い

  4. 家賃

  5. 健康保険

  6. 携帯の再開

  7. 電気代など

 

ルーティン的な支払いはまず最初にしなければいけない、という固定観念と

ストップした携帯を再開させたいという焦りがこの順序にさせてしまったのでした。

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まずはきっちりカードローンの会社から振り込まれたお金をそっくりそのまま返金して

カードローン金利を下げた上でその他の支払いを粛々と行うべきでした。

 

優先順位の3まで支払った段階でふと気がついてしまったのです。

あれ?足りないかも。

と。

そしてまさしくおかしなことになったのです。

 

銀行ATMでいざ振り込もうとしたら足りないのです、

 

あと数千円が…。

 

今なら思います。

その数千円をクレジットカードのキャッシングで借りればよかったのです。

金利を下げるためには。

 

しかし、もうこれ以上借りたくはないという中途半端な感情が

僕にたったの数千円を借りることを止めさせてしまったのです。

理性的な判断は全くありませんでした。

 

翌日、カードローンの専用ATMで数千円足りないまま返金をしました。

当然、金利は下がらず、返金したお金にもきっちり利息は取られていました。

 

無駄にトータルの返済額が増えてしまうという恐ろしい罠にまんまとハマってしまったのでした。

大阪での初就職から3年。

そしてそこを退職してから1年ちょっと。

この1年少しの間に世界がひっくり返ってしまったようでした。

転々とした生活、時折訪れる孤独。

本当に自分が嫌になってきました。

 

数千円くらい借りたらよかったじゃないか?

 

後悔が後悔を連れて続々と心の中をじわじわと侵食してきました。

 

いよいよ明日が見えなくなってきました。

誰もどこへ行くべきかも教えてはくれません。

どこで道誤ったんだろう?

 

岐路

 

またもや後ろを振り返るという後ろ向きな気持ちが芽生えてきました。

 

ドラえもんは居ないし、どこでもドアもない。

どこかへ逃げたくても逃げる場所すらない。

逃げるためにもお金が必要なんだ。

 

そう考え始めるといつしか僕は、

 

お金というものに憎悪を感じ始めていました。

 

お金くん。どうして君は僕からいつも逃げていくんだ?

 

からっぽの財布を見つめたあと、無力感が漂う部屋の中で天井を見上げました。

 

それでもお腹が空きやがる。

ちくしょう。

 

 

そんな時、一つの連絡がきました。

 

続く

 

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木村
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めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。