アイデア

dropout
 

前回の続き

借金返済に対するやけくそなアイデアについて

 

20代の後半戦を迎えてもなお、時間は永遠のものだと僕は思っていて

今その瞬間という時間を刹那的に消費しているだけで

あまりに自分にも他人にも無自覚で無責任に生きていました。

 

そんな生活の僕でしたが、時計を気にしながら働かなければいけませんでした。

社会人としては当たり前のルールとして前提にある『時間管理』。

 

time

 

時間管理はとても苦痛でした。

しかし、時計を気にしなければならない理由が2つありました。

 

まず1つ目としては、派遣会社へ労働時間を報告するためでした。

 

相変わらず、労働時間の短縮報告を要求されることがありました。

みなし残業は制度はないのですが、みなしと見なされがちでした。

今は『働き方改革』関連トピックが多くの場面で登場し

みなし残業や36(サブロク)協定なんてワードも聞く機会も増えてきましたが

その当時の僕の感覚としては、

オー人事、オー人事のその当時のCMイメージ

 

派遣社員は気楽な稼業。

適度に仕事して、報酬をもらって煩わしい組織内の摩擦とも無縁。

 

そんなイメージしかありませんでした。

 

そしてそんなイメージとは裏腹に

派遣先に日報として作業内容と勤務時間を

事細かく報告しなければならないのでした。

 

こういった勤怠管理や業務報告は

僕のようなルーズなタイプには苦痛でしかありませんでした。

 

毎日、毎日、何をどれだけの作業時間で製作したか。

そして、それらに対して無駄がなかったかを逐一報告し

チェックされるのでした。

 

その日は定時前から少し落ち着きなく

時計を気にしたりしながら、周りの様子を伺っていました。

 

理由は定時ダッシュでとある場所へ行く予定だったからでした。

定刻の合図とともに、その一連の仰々しい儀式を滞りなく済ませ

9月だというのにとても風が冷たくそして強く吹いた京都の街中を

自転車で南へ走っていきました。

 

20分程走ってその建物に到着しました。

 

そして恐る恐るインターホンを押しました。

 

ピンポーン

 

『はい』

 

少しぶっきらぼうな印象の返事が返ってきました。

 

「あの、今日お約束してました木村です。」

 

『どうぞぉ』

 

オートロックが解錠されて指定された部屋へ向かいました。

再度、ドアの前でインターホンを鳴らすと

 

『どうぞぉ』

 

と返事があったのでドアを開けて中へ進んで行くことにしました。

 

『奥へどうぞ』

 

促されるがまま先へ進むとPCの画面に向かって黙々と作業している女性がこちらを見て

少し恥ずかしそうにしながら、一瞬ニヤリと笑いました。

そして再び黙々と作業に戻りました。

 

僕ともう一人の友達とアニメーションを製作していた

イラストレーターの友人Mでした。

 

『こんばんは』

 

一通りの形式的なやりとりをして履歴書を提出しました。

面談ではいろいろ話を聞くことができました。

 

  • 社長さんは僕より少し年上の大学の先輩だということ。
  • デザインがある程度できる人を求めているということ。
  • いろいろアイデアがあるので一緒に頑張ってくれる人が欲しいということ。
  • 独立や起業はこんな感じだ。

 

大体そんな感じの話でした。

 

ベンチャー精神に溢れた熱い話や武勇伝、夢や未来の話の中に

時折僕の興味を惹くための話題を盛り込みながら

説明してくれているのがわかりました。

 

ちょうどその頃はライブドアがスカイプをライセンス契約したり

ブログが世の中に出始めたりといった次のインターネットの幕開けを感じていた僕は

今のまま大量ページの本やカタログ、マニュアルなどを永遠に作り続けるのもどうかな?

と迷い始めていた時期だったので興味を持ちながら話に聞き入っていました。

 

面談的な流れが終わったあとは雑談をしました。

大学の誰を知っているかとか共通の話題探しをしたり

そんな風にしてその夜の面談は終わりました。

 

そして帰宅の途中で、友人Mから電話がかかってきました。

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「どやった? ええ人やろ。木村さんはどうする?無理せんでいいとは思うで」

 

的なことを言っていました。

 

あぁ、行ったほうがいいのかもなぁ。

 

と、採用通知があった訳でもなく生意気にもそんな風に思いながら

その夜は例のごとく屯風に寄って帰ったのでした。

 

数日が経って採用となりました。

 

気分を新たにまた別の場所でのスタートできることに少し浮かれていました。

 

派遣先では契約の更新をお願いされながらも

結局僕は派遣社員をドロップアウトすることにしたのでした。

ベンチャーという響きだけで無性に気分が良くなっていました。

 

大事なことを忘れていました。

 

借金返済という使命です。

 

僕はいつの間にかベンチャーのドリームの中に現実逃避をしていました。

 

 

そして面談時、冒頭の説明で

『今より収入は減るだろうけど、それでよければ。それでも‥』

という話の部分はすっかり抜け落ちてしまっていたのでした。

 

僕はリスクの部分の説明を勝手に頭から排除して

過度なリターンを得るという妄想を膨らませて

 

ベンチャーで何か一発大当たりして一発逆転!

借金完済万々歳。

 

的な根拠ない熱狂を自分に与えていました。

 

そして、転職してひと月足らずで

折角コツコツと返済し続けていたカードローン残高を

逆に増やすという愚かの行動に出てしまっていたのでした!

 

そして、その明細を見てさらに自棄になってしまったのです。

 

最初借りていたのは40万円。

しかし、100万円キャンペーンを経て

いつの間にかこの時点で80万円を借りてしまっていたのでした。

 

毎月の返済は次借りるための返済となっていたのです。

今月の返済を済ますことによって

次回足りないお金を借りられる条件を作る。

と、そんなバカみたいなサイクルが完成してしまったのでした。

まるで何かの中毒のように借りるのが常態化してしまったのでした。

 

そして、僕はやけくそになったのです。

このサイクルを断ち切るために。

 

思い悩んだ末、馬鹿げた一つのアイデアが浮かんだのでした。

収まらない気持ちは僕を走らせました。

そのアイデアを実行するために、

 

 

そして僕はコンビニATMの前に立っているのでした。

 

続く

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木村
About 木村 30 Articles
めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。