モテ期(俺的)

dropout
 

前回の続き

バブル

それは夢の響き。

その時代を過ごした人たちからは信じられない話ばかりを聞かされました。

アルバイト先のお客様にチップやタクシー代としてとして1万円をポンっと渡されるとか
とにかく使い方がモノもコトも何もかも派手で、とにかく酔いしれているような世界。
今でもとても考えられない感覚の出来事ばかり。

そういう世界があったってことは何となくテレビのニュースなんかで見聞きしていたので
高校を卒業して一人暮らしをはじめるときには何となく輸入家具と輸入雑貨なんかが並んだ
(まるでその昔に流行ったトレンディードラマのような)都心の広々としたワンルームで
気ままに過ごすようなイメージを夢見ていました。

 

 

こんな極端なシチュエーションプレイばかりとは言えないにしても何となく大人になったらこんなイメージなんて思っている部分が少なからずありました。

一人暮らしの夢の世界はやはり夢の世界で、現実はのどかな風景が広がる大学にほど近い、共同トイレ、共同風呂(お湯なし・シャワーなし・水をはって湧かす方式の湯船)、共同台所で、今流行のシェアなんとかみたいなおしゃれな感じはゼロの時代を遡ったような下宿に住む事になりました。
(結局、風呂場にはナメクジが壁一面に大量発生し、黒い虫が何十匹と出現したため、たった2日で風呂に入るのはやめました)

だから、現実味なんて全くなくて憧ればかりで掴むことのできない物語。
歴史を巻き戻しすことが叶わないように遥か彼方の蜃気楼。

 

chart

 

それが、僕にとってのバブルでした。

 

しかしそれは、突然訪れました。

 

人生初のバブル期の到来。
といっても、金銭的なバブルではなく

 

モテバブル。

 

人生に一度訪れるというモテ期。
それに気付くか気付かないかは運次第。
その幻のモテ期が到来したのでした。

いつものお店、いつもの常連さん。
そして、100万円の借金を負った僕。
変わらない景色、変わらない場所。

変わったのは僕の負債額だけ。
そんな日常の一コマの中で、突然

『君がモテてる木村くんやんな』

と、知らない女の人が声を掛けてきたのでした。

 

woman

 

全く意味がわからないまま会話を続け聞いていくと
要するにこういう事でした。

どうやら、最近モテてる人がいるらしい。
その人物は結構の頻度で飲みに来ているらしい。
なので接触機会頻度は高そうだ。
そのため、どんな人物なのか見にきた。
どうやら会話の内容からこの人(ちんちくりん)がその人物だと断定した。

という事だったようです。

 

これが僕のバブル(モテ期{俺的})でした。

 

バブルは近代に入ってからは幾度となく発生していて、古くは1637年のチューリップバブルが有名ですね。
最近話題になっていた仮想通貨バブル(これはまだどうなるか解りませんが)がありましたが
とにもかくにもバブルというものは『ファンダメンタルズから乖離した資産価格』のことを言うといわれるので、そうことで言えばこの『ちんちくりん』が現実の資産価値(モテ度)から大きく離れ
買い手が増えた状態が訪れ始めたことを象徴するという現象を目の当たりにした瞬間でした。

圧倒的なモテ人間からすればありえないそよ風にも満たないモテ期なのですが
そのようにして噂が噂を呼び、モテが一人歩きして局地的瞬間最大風速として
ちんちくりんな僕の人生としてのモテ期はこのようにして訪れたのでした。

どこから聞いたのか

『木村君のそのお金、全部返してあげてもいいわよ。』

とか本当か嘘か解らないけど、言い出すお姉様まで現れました。

色んな意味でクラクラしそうになりましたが平静を装うので精一杯でした。

モテというフィールドに属した事がない僕としてはとても嬉しい反面、
戸惑いと、変な高揚感と、後ろめたさなど様々な気持ちが交錯しまくっていました。

もしかしたら、ホストクラブとかでチヤホヤされるって感じに近いのかもしれません。
しかしビビリで慎重な僕は、壮大なドッキリ(誰がわざわざ仕掛けるねん)だと思って
この時の状況を全く楽しめませんでした。
しかし、周りの友達はこの頃の僕をおもしろがっていたように思えます。

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いや、違うんだ。
なにか得体の知らない力が人をどこかへ運んでいくんだってば。
そういう風に今でも思っています。

 

この時のことを振り返ってわかったこととしては、

  • モテようとしてもモテる訳ではない。
  • 何となくモテているらしいという噂は(自然発生的に)勝手に歩き始める。
  • それはいつしかクチコミみたいな感じで変な期待感を熟成する。

こういう流れに乗って開花するのがホンモノなんですね。
そういう運も魅力も併せもっている感じ。
これは行列ができるお店やアーティストなんかにも少しばかり言えるかもしれない。

現在はそのように思っています。

アメリカのウォール街の伝説的なファンドマネジャーでテンプルトン財団の設立者
「ジョン・テンプルトン」の言葉にこういう格言があるそうです。

“Bull markets are born on pessimism, grown on skepticism, mature on optimism, and die on euphoria.”
『(強気)相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく』

 

程なくして、冬が片足を突っ込みかけはじめていました。

(モテ)バブルはまさしく懐疑の中で育とうとしていたのかもしれません。

しかし僕には課題がありました。

・またもや訪れたアパートの更新をどうするか?
・100万円のカードローンをどうするか?
・リボ払いの残金20万円をどうするか?

この3本で脳みそが支配されていました。
けれども、悩んでいる素振りを悟られないようにするのに必死のパッチでした。

11月のある日、僕はバンドのメンバーとスタジオで練習の後
相変わらずグタグタの会話の中に何かの糸口が得られたらいいなと思いながら
引っ越しをすべきかしないべきかを紛れ込ませていましたが
バンドメンバーは容赦なく完全に人ごとの返しをしてきたのでした。

『引っ越したらええやん』

とドラマーは言いました。

「いや、敷金礼金ないねん、っていうか払う金ないねん」

『貸したろか?』と、ベーシスト。

「いや、もう借りてるからこれ以上借りるのは」

『なんぼ借りてる?』

「ぼちぼち」

金額は言うのもつらいので誤摩化しながら返事をしました。

「なかなか返せへんねん」

というと

『返せへんかったら自己破産したらええねん』

「…。」

 

自己破産。

 

彼らがどういう脈略で人に自己破産を薦めるのか皆目見当がつかなかったのですが

たぶん、楽になる。

それが理由だったのかもしれません。
そうしたら自由に?或は解放されるかもしれない、そう思いました。

しかし、なんとなくそれは今ではないな、と思ったのでした。

僕はたとえ話をしました。

ぼくは車を買った。
120万円で新車を買った。
買ってすぐぶつけて壊れて廃車になった。
保険も入ってなくて残念だった。
だから支払いは仕方ない。

(僕は免許もなく、車の相場も知らないのに)120万円くらいの車をローンで買ってすぐ壊してしまった。
そんなイメージをする事にしたのでした。

そのようにモノ消費に置き換える事で、実際はコト消費の方が遥かに多かった負債を自分の中で消化しようと試みました。

そしてそんな会話の中で急にベーシストが

『俺、実は家を出ようとは思ってんねん』

的なことをふと言いました。

すると、ドラマーが

『おっさん、その方がええと思うで』

と言いました。

すかさず僕は

「それなら一緒に探そうや!」

 

light

 

一筋の光を見いだした僕は、なんだかこれは一つ突破口が有るかもしれない!

と思い、ベーシストに不動産探しを提案する(そそのかす)事にしたのでした。

そんなとき、メールが携帯に届きました。

「まいど!!きむにぃ今度の土曜、こないだ言ってた飲み会いける?」

学生時代に知り合って仲良くなった美容師の男友達からでした。

バブルというものは、その渦中にあってはバブルと気付かない性質のものなのです。

僕は浮かれていたのでした。

つづく

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木村
About 木村 30 Articles
めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。