イルカホテル

dropout
 

前回の続き

初デートはそうしてただの飲み会と化し、楽しかったものの、幕末好き女子には1ミクロンもええところを見せられず

 

携帯止まっている人

デートに男友達誘って呑んだくれる人

 

という、残念な印象を彼女の脳裏にくっきり焼き付けて終わりました。

12月も残すところわずかとなり、新たな出会いを求めて連日連夜フラフラと出かけたり、全く懲りずに反省もしないで自宅の鍋パーティーに幕末好き女子を誘っては、さらにアホなところを存分にさらけ出してますます印象を悪くしたり

そんな感じで好き勝手に過ごしているうちに年が明けてしまいました。

 

お尻に火がついて大火傷しそうでした。

今のアパートを

更新する

or

引っ越しする

という選択は待ったなしでした。

いずれにしてもお金を必要とするイベントでした。

引っ越さなくても更新料と家賃。

引っ越したら敷金礼金と家賃と仲介手数料。

もう待ったなしでした。

人間というものは追い詰められると、視野が狭くなり判断能力が劣っていくか、画期的な解決策を見出すか、火事場の力を発揮するか、俺はどうなんだ?

と、ここで僕は底力を試されているようにも思えてきました。

きっちり借りた100万円の返済はスタートしたばかり。

さて、どうする?

そんな時にバンドのベーシスト(以下、もりし)の話を思い出しました。

彼は『俺、実は家を出ようとは思ってんねん』と言い

僕はすかさず、それなら一緒に探そうや!

と返したのでしたが、その先には具体的に進んでいませんでした。

お尻が炎上している僕はとにかく早く決めてしまいたく、次の休みの日に物件探しをするために不動産屋を巡ることに彼を誘い出しました。

 

最初は割と大手の仲介業者へ行きました。

そこで、僕の条件を言って幾つか物件資料をもらいました。

しかし、どれも今ひとつピンときませんでした。

封筒を持ち帰り、物件資料を眺めました。

家賃や敷金・礼金などを考えると微妙でした。

 

そんな時にもりしから提案があったのです。

『木村君さえよければ、共同で借りて住まへんか?』

dream

おおー!

キター!

と、一瞬思いながらも

「ほんまに?」

と白々しい返事をしました。

友人の女の子もルームシェアして生活しているのを知っていたのでやってやれないことはないだろうな、と思いました。

さらに、

『当初の持ち出し分は俺が立て替えるから、月々返済してくれたらいいで』

と好条件の無担保無利子の融資まで提案してくれたのでした。

 

これは渡りに船!

 

一つのウルトラC的解決策が提案された瞬間でした!

  • 引っ越しはできる。
  • お金は(一応)借りつつ、家賃に上乗せして返済できる。
  • 月々のローン返済の負担もなんとかなりそう。

こうなったら、やるしかない。

そう決まれば話は早いのでした。

翌る日も朝から不動産屋巡りをしました。

物件巡りは難しいながらも色々な家を見ることができて面白いものでした。

はじめはアパートやマンションタイプで部屋数がある程度あるものを探そうということになり

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シェアの可能性がある物件を見て回ることになりました。

加トちゃんケンちゃんごきげんテレビの時の部屋みたいな雰囲気を望んでいたのですが

僕たちの設定した家賃が8万円前後ということで

案内される物件は、

まるで、新婚さんが住むような物件ばかりでした。

微妙に狭くて、なんか距離感が近い。というか密着している。

男二人でこれはかなり気持ち悪い。

誤解を招きそうだし、想像しただけで嗚咽しそうでした。

 

アパートマンション路線は一旦放棄することにしました。

そこで、今で言えばテラスハウスというんでしょうか?長屋のようなものや、一軒家などに方向転換することとしたのです。

若干物件探しに疲れが見えてきたのですが、限られた時間で決めてしまわなくてはいけません。

 

おまけにもりしは所属する電気自動車冒険チームが世界初のゼロエミッションエネルギーだけを使って厳冬期の氷結間宮海峡横断に挑戦するとかなんとかで、そのための準備やなんやらで彼にも残された時間は限られていました。

詳しくはこの記事に。

そして案内されたのは、家賃は安くて見た目はボロボロ。

しかし部屋は改装されてキレイでしたが、部屋数が少なく、どうやってここで男二人で生活を区切る?と考えた時に

またもや新婚さんだ、きついなぁ。という物件でした。

次いでの物件は

普通の一軒家でファミリーでも問題ないサイズ感でした。

鍵を開けてもらい中に入ると

貞子や

と、一瞬でそう思える物件でした。

間取りも何もかも映画『リング』に最初に登場するあの家そっくりでした。

これでテレビとビデオを置いたら完全に貞子出てくる奴やん。

そう思ったのでした。

おまけに屋根裏部屋まであり、今思い出すだけでも身震いのする恐怖物件に僕の頭の中で仕上がってしまったのでした。

「ここはやめよう。なんかあかん気がする。」

そう言うと、もりしも珍しく

『あかん気するなぁ』

と言ってくれたのでホッとしました。

real estate

物件探しは難航していました。

翌週、困り果てているところにもりしが不動産屋情報をゲットしてきました。

早速二人で行ってみることにしました。

条件を言うと、ガサガサと奥の棚から資料を持ってきてくれました。

『ここから近いです。』

と、不動産屋から歩いて数分のところにその物件はありました。

見た目はまたもやボロでした。

一歩踏み入れるとさらにボロ感がひしひしと伝わってきました。

床は所々うっすら沈んだり軋んだりしました。

玄関は異様に広く、玄関を上がるとすぐ左手になぜか大きなガラス戸があり、その中の狭いスペースに謎の洗面台がありました。

一階は玄関、洗面スペース、細長く狭い台所、メインの部屋、サブの部屋、

そして、人一人が足を曲げてもきつそうな狭い狭い浴槽がついた風呂ユニットがありました。

メインの部屋をぐるりと取り囲むように廊下がありました。

二階へ上がると部屋は3室ありました。

ボロボロですが部屋数は十分でした。

家賃も予算ギリギリ行けそうでした。

 

ここにしようか。

 

僕たちはお互いそう言いました。

こうして、この家は僕らのバンド名に因んでイルカホテルと名付けられ、おっさんたちの珍妙な共同生活がスタートすることになりました。

そして遂に僕は自由気ままな一人暮らしからもドロップアウトしてしまったのでした。

light

しかし、カードローンとリボ払いのツケと家賃の上乗せ返済は予想以上にきついものになるとはこの時は想像もしていなかったのでした。

 

続く

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木村
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めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。