結局、結婚資金っていつから貯めてるの?

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前回の続き

価値の提供と価格設定について

女子がいなくなった男二人のむさ苦しい事務所で、本業のデザインの仕事しながら悶々としながら瞬く間に1か月が過ぎました。

予算も少なくカメラマンが撮影した写真もなく、原稿もツギハギでそれらを手繰り寄せ、トータルでコーディネイトし、ただの石ころをより美しく価値あるものとして魅力的に提案しながら機能的であることを意図したカタログの仕事でした。

その仕事を終え、振り返ってみると『捧げた時間』に対する『金額的ミスマッチ』が僕の中にしこりのように残りました。
要するに納得していなかったということだけでした。
初めてに近い感覚でした。
その時、自分では売値より価値があるものを提供できていたと思っていたのでした。

 

カスタマーバリュー

僕は『石ころをより美しく価値あるものとして魅力的に提案する仕事』をしながら、その仕事をより質の高い価値あるものとして魅力的に提案できていないことに憤りを感じていたのでした。

この出来事は僕が初めて『カスタマーバリュー(顧客価値)』についてと『価格設定』について意識するきっかけになったと思います。
今より10年以上前なので忘れてしまいたいことを含めて記憶が色々曖昧なんですが、ネット通販という世界では価格というメリット以外でしっかり価値提供できているサイトはあまり見かけなかったように思います。

real estate

ネットでは各社のサービスや製品はカタログとして並べられ、価格表が明確化されることで選ばれやすさを獲得していました。
商品説明や品質を謳っても既製品であれば低価格の方が優先度が高くなり、ネット通販は価格を検索する場所になったということでした。

ネットでデザインを売る難しさとしては、カスタマーバリューとプライスのカタログ化がありました。

無理やりオーダーメイドケーキに例えて言うと、『果実やクリームなど、素材を一式はこっちが全部用意するんで、今までとは全く違う印象の斬新なイメージで上品でワクワクして荘厳で踊り出しそうなケーキを価格.COMで見た一番安い料金くらいでデザインして作ってください。』とかいう意味不明なオーダーがまかり通る業界なのでした。

そのため、一度焼き上げてしまったらおしまいなのでケーキ職人たちは『デザインのラフスケッチ』を見てもらってイメージをすり合わせる作業をするんですが、だいたいその時点でお客さんは『現物を見てみないと全くわからない。想像もできない。』とか『まず作ってみて。』とか仰るパターンが結構あるんですね。

それでもケーキ職人は限られた時間と予算の中で頑張ってアイデアを絞り出してスケッチを重ね、時には現物そっくりのモデルまで作って提案するんです(自分の時間を削って)。
そうやって繰り返し回数を重ねてやりとりをして最後の最後で天の声が『全然思ってるのと違うから、これと似た感じにして』なんて言われてパクりギリギリの線に変更…なんてことも多少あります。
そして一口食べるなり、『コンビニの方が美味しいね。』なんて言われるオチまでついてくる場合もあるんですね。

利益を確保するためには、下限価格としての製造コストを上回る価格が必要で、カスタマーバリューは価格に置ける上限値として設定されるはずです。
しかし、ここでは素材一式が提供され、かつデザイン費は価格.comを参照とされているので価値を売りにすることが困難です。

クリエイティブという魔法のガチャがあって、ネタを放り込んでガチャを回せばどんな難問も即解決!的な現象は日本的な習慣なんだろうな、個人的には思います。
そのクリエイティブという魔法のガチャのは一回しかお金を入れずに何回も材料を出し入れし、壊れるまで使いつぶすなんてこともあるんですね。

さらに、職人たちも意地があって『このミッション、必ず満足させてやる』と自分たちの身(時間というコスト)を削って挑んでしまう。

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僕はそんなことを思い描き、「なんて割に合わない商売なんだ!」と思い、どこからか『好きなことならお金のことなんか考えずに没頭しろ』などというこれまた日本的な天の声が聞こえた気がしました。

前回残りのローン残高:848,236円


リボ払いの残高:50,000円

こんな時間をかけて合宿同然で挑んだ仕事にも関わらず、ローン残高は減る気配は見えませんでした。
しかも事務所の近所の安売りスーパーに連日のように買い物に通ったせいで、レジの女の人(年齢不詳)からメールアドレスまで渡されてしまい、それからというものその店に行きづらくなりコンビニ通うことになり余計にお金を使う羽目になったのでした。

僕に残ったものは、このくらいのボリュームの仕事は一人でもこの期間あればある程度できるという経験値的感覚とコンビニの支払いでカードを切ったばかりに再び増えたリボ残高だけでした。

cash card

その仕事が終わった頃、小学生からの親友Mが突然連絡をしてきました。
久しぶりに会うことになりました。
店に着くなりMは封筒を僕に渡しました。

披露宴の案内でした。
僕はびっくりして、すぐにはうまくおめでとうと言えませんでした。
そしてよく見ると中にもう一枚紙があり

『当日余興をお願いします。』

と書いてあったのでした。

そうして博多まで結婚式へ行くことになりました。
初の博多は食べ物も飲み物も最高に良くてずっとここにいてもいいなぁと思うくらいでした。

Mの結婚披露宴はそれはそれは僕の知っている今まで出席した中で一番豪勢な感じでした。
でかいホールに上等な料理にちゃんとしてそうな人たち。

やばい!世界が違う!
めちゃくちゃ焦りました。

たちまち僕は浮いている感じがしました。

ちゃんとした席だからちゃんとせなあかん。

「ちゃんとせなあかん。」

それしか頭になく完全アウェイの空気感余興をやり終えました。

結婚資金っていつから貯めてるの?

後日、彼に会う機会がありました。
話の流れで結婚披露宴にかかる経費とかその辺の話もちょいと出ました。

話の片鱗だけ聞いて恐ろしくなりました。

おまけに嫁さんが喜んでくれたらそれでええ、的な神のごとき発言まで聞き取れたのでした。

 

ああ、僕のカードローンなんて屁みたいなもんだな。

 

僕は自分のクズさ加減を改めて自覚しました。

そういえば僕に職場を紹介してくれたイラストレーターのMももうすぐ結婚式。
結婚式を執り行うというだけでちゃんとした大人で僕から見たらステージが5つや10上のレベル、いやそれ以上のレベルに属した人間に思えました。

みんなしっかりとしていた凄いな。ただただ感心しました。

僕には人間としてのバリューも薄い、そんな気持ちにもなってきました。

もし万が一、僕が彼らのように結婚式を挙げるとなるとと想像すると、天文学的に遠い出来事に思えました。

まず結婚式っていくらかかるの?
結婚資金っていくら準備しとくものなの?
結局みんなどれくらいお金がかかっているんだろう?
それはいつから準備していたんだろうか?

などなど、いくつか疑問が浮かび上がりました。

ローン返済すら終わりが見えない中、決して訪れることのない出来事のように思いました。

そんなことを思いながら、もうこの年は暮れようとしていたのでした。

 

多分、世の中の大半のまともな人たちは、就職するなり毎月少しずつでも結婚資金って貯めて始めているのじゃないだろうか?

それじゃないとみんな若くして結婚式なんてこの日本で挙げられないんじゃないか?

そんな風に思うのでした。

若い人たちは早めに貯めた方がいいと思う。

まだ間に合うから。

僕には後悔している理由があるから。

それはもっと先の話。

 

あと残りのローン残高:795,316円


リボ払いの残高:約120,000円

 

続く

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木村
About 木村 33 Articles
めぐれるの副編集長してる人。 静岡県浜松市出身、うなぎパイのとこです。 京都に来てはや20年以上。お酒とロックと夏が好き。 自由気侭なフリーランスで2児の父。