誰そ彼は[第1回]「ラリー藤本(マザーシップスタジオ)」

[第3回]アサオカ01(アサオカ01&A.ランチ)ミニアルバム「HOT MENU!」発売記念インタビュー”全曲解説編” 
 

めぐれるがジャンルレスに独断と偏見でチョイスした、魅力的な人たちにお話を伺い紹介していくコーナーです。

記念すべき第一回目は、京都駅の南にある一軒家をまるごと改装した音楽スタジオ「マザーシップスタジオ」のオーナーであるラリー藤本さんにお話を伺いました。

ラリー藤本さんは、ベーシストとしても京都では有名な方で、所属するCHAINS(チェインズ)や数々のアーティストのサポートで活躍されています。

私の中のイメージでは、スタジオって会社(もしくは円広志さん)が経営していて、練習するためのブースが何部屋もあって、時間刻みでいろんなバンドが入れ替わり立ち替わり練習に入っては出て行くような感じなのですが、ラリー藤本さんが個人で経営されているマザーシップスタジオは、1階にスタジオブース、2階に休憩室、3階にレコーディングブースが1つずつある3階建てのお家なのです。

謎のベールに包まれている!

すっごく気になるので根掘り葉掘りしてみました。


自分のスタジオを持つっていうのが夢でした

 

マザーシップスタジオラリー藤本

 

—マザーシップスタジオって結構前からありますよね?

 

ラリー藤本:オープンが2002年なので、今年で15年ですね。

 

—個人でスタジオを経営するってどんな感じですか?

 

ラリー藤本:今はスタジオって大きいところが増えてるんですけど、マザーシップスタジオがオープンした2002年頃って京都は殆どが個人経営のスタジオで、お金持ちの余裕の有るおじさんとかが趣味でやってるような所が多かったんで、それが普通だと思ってました。

僕は資産家でもなんでもないので(笑)創業当時を振り返ると結構無茶したなぁって思います…

今なら絶対にやらないですね(笑)。

 

—マザーシップスタジオをオープンされた経緯を伺えますか?

 

ラリー藤本:大学卒業後も音楽活動を続けて行きたいって思ってましたが、自分はサラリーマンみたいな仕事をしながら音楽活動もアグレッシブに出来る様なタイプじゃないと思ったんで、音楽を続ける為には何かしら音楽自体を生業にしないと音楽辞めちゃうなと思っていました。

でも音楽で飯を食う手段てのはバンドで手っ取り早く売れる以外だと「音楽講師」か「貸スタジオ経営」位しかその頃は思いつかなかった…っていうのが一番の理由ですかね。

とはいえ当時(90年代初頭)はCDバブルでミリオンセラーがバンバン出て業界の羽振りも良かったし、完全に自分も一旗あげる!と思ってましたけど(笑)

 

—マザーシップスタジオがオープンする前からレコーディング関係のお仕事をされていたんですか?

 

ラリー藤本:バンドを掛け持ちしながら、音楽活動の為に融通の利く仕事を複数やりつつ生活していましたね。

その頃から趣味の範疇(はんちゅう)で機材買い込んでレコーディングはしていましたが仕事とかにはなってなかったです。

 

—夢だったスタジオ経営を実行にうつしたきっかけは何ですか?

 

ラリー藤本:バンドで一旗あげたろうと思って二十代の全てを捧げて音楽やって来ましたが、いずれのバンドもあとチョットのところでメジャー契約に至らず活動停止や解散などを繰り返し、30歳を目前に家族からの圧力も増したので(苦笑)、取り敢えずプロミュージシャンの道は諦めて、泥臭く音楽の仕事で食って行こうと少し方向転換を図ったんですね。

それから数年かかって金策と計画を練って何とか小さいスタジオを出来る所まで持って来れたのが2002年。

そしたらその前年から自分が加入した旧知のバンド「CHAINS(チェインズ)」でコロムビア/TRIAD からデビューの話が持ち上がって…

まさに青天の霹靂、渡りに船って感じでした。

残念ながらCHAINSのメジャー時代にバンドとしてめぼしい結果は出せませんでしたが、僕個人としてはプロの環境で制作を学ばせて戴き人脈も築けて、メジャー契約が終了してからはその経験を通して業務スタジオとしての仕事がメインになりました。

 


アットホームな「バンド小屋」的雰囲気

 

マザーシップスタジオ 1F メインブース
【1F メインブース】レコーディングとリハーサルの両方に優れた音響特性を持つ渾身の26平方米 湿式浮床ブース

 

—マザーシップスタジオの特徴ってありますか?

 

ラリー藤本:大手の街スタは広い顧客層に使ってもらう為に、どうしても平均的な機材や楽器を置いている為に、設備がどこも似通っていて、僕みたいなチョット訳知りのバンドマンからすると全然ワクワクしないんですね。

うちは個人スタジオなので一般的なスタジオに置いてる様な物は敢えて置かないとか、そういうこだわりはありますね。

 

—マザーシップスタジオの音には個性があるんですね

 

ラリー藤本:見たことない楽器があるとか、使ってみたかったアンプがあるとか、ここで何かそういった出会いがあると良いなと思っています。

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ブースの音周りも設計段階からこだわっているし、そこら辺わかってもらえる人にはすごく反応が良いです。

逆にあんまりそういうのに興味がない人には使いにくいのかもしれないですが、まぁそれはそれで良いかなと(笑)。

 

—他にも特徴はありますか?

 

ラリー藤本:小さいスタジオなので、確実に人の顔が見える、お互いのことがわかるのが特徴でしょうか。

近い関係で接していけるサイズ感が利点ですね。

その利点をいかして融通がきくリハーサルやレコーディングができます。

 

—どこを目指しているのかとか、趣味嗜好までわかってくれている人がレコーディングとかしてくれたらやっぱり仕上がりが違うんでしょうね。

 

ラリー藤本:1時間あたり何円で、決められた流れで、RECボタンを言われたように押す…という「作業的」なレコーディングとは違うフレキシブルな対応や、必要に応じて色々お節介を焼く事ができるのがうちの一番のメリットだと思います。

どうしても大きいスタジオだと数をこなさなければならないので流れ作業的な感じになったり、お客さんもそういったニーズしか持ち得ない人たちが集まると思うので、そうじゃない嗜好性を持つミュージシャンの受け皿になれれば良いなと。

 

—なるほど

 

ラリー藤本:マザーシップは一軒家を改装した言うなれば”ペンション”みたいなスタジオなんで、程よく閉鎖的で”顔がささない”というのと、京都駅にも近いので、有名ミュージシャンだけでなく皆さんご存知の俳優さんや映画監督、国民的アイドルetc.著名な方もたまに利用される事があります。

練習や録音でスタジオご利用されている間は常に半貸切状態になるので、長時間じっくりゆっくり作業するのにも向いていると思います。

 

—アットホームな雰囲気のあるスタジオですよね。

 

ラリー藤本:休憩室にはミニカフェと、僕のお袋の手作りお菓子(プリン、クッキー、コーヒーゼリーなどその時によって違います)が常時数種類用意してあります。

自家製デザートは結構有名みたいで、初めて来た人が既に口コミで知ってて楽しみに来てくれることもありますね。

 

—何度かいただいたことがありますが、どれも美味しかったです。

 

ラリー藤本:貸切レコーディングの時には「自家製弁当(※要予約)」を出すサービスもしています。

 

—食べてみたいなあ……おいしいって評判ですよね。

 


 

初めて来られたら面食らうかもしれない

 

マザーシップスタジオ 2F 休憩ラウンジ
【2F 休憩ラウンジ】クリエイティブな鋭気を養える吹抜天井扇の回る快適くつろぎスペース

 

—最後に一言お願いします。

 

ラリー藤本:いろんな点で普通のスタジオとはかなり違うので、初めて来られたら面食らうかもしれませんが、そういうスタイルでもう15年やってきています。

いわゆる「駆け込み寺」的にスタジオに来て音楽の人生相談だけしに来る人もいるし、まぁ全てのニーズに応えれる訳ではないですが、何かしら役に立てることは有るんじゃないかと思います。

そういう何かを求めているなら来てみてください。

デザートだけでもいいですけど(笑)

 


プロフィール

 

マザーシップスタジオラリー藤本

 

マザーシップスタジオオーナー兼ベーシスト。

大阪府出身。小6にBillboardで洋楽に開眼、中2でBassを始め、高1で初Band結成、大学進学を機に本格的な音楽活動を開始。

’92年ベースマガジン主催ラリーグラハム・スラップトーナメント優勝。

’93年の同志社大学”The Third Herd Orchestra”への参加を契機に関西のJAZZ/R&B系の数多のバンドを渡り歩く。

その後オリジナル日本語ロックバンドの活動に傾倒、’02年”CHAINS”に加入し翌年コロムビア/TRIADよりメジャーデビュー。

マザーシップを立ち上げて以降は京都周辺アーチストのライブや音源制作サポートを生業とする。

趣味は説明。

特技は大掃除。

ハウスダストアレルギー。

マザーシップスタジオのホームページ

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清水はなこ
About 清水はなこ 11 Articles
めぐれるの文章を書いている人。 京都生まれの京都育ち。 だが、旦那が転勤になり2017年の春より東京在住。 座右の銘は「三度の飯よりロッカバラードが好き」。 趣味はセルフリノベーション。