2018年5月末に発行した紙のめぐれるの裏表紙に掲載されている、カフェタイガーの店主、モルグモルマルモ深田さんと、野菜の通信販売をしている、株式会社坂ノ途中のマーケター松田さんの対談。
紙面の関係で削りに削っていますが、実は大盛り上がりでたっぷり話してくださっていたんです。
とても面白かったので、webのめぐれるに全文掲載いたします。
野菜をもっと知りたくなる、食べることに興味が湧いてくる、そんな座談会になっています。
老若男女がおなかいっぱい食べて、おいしいなって言ってもらえればいいな
めぐれる:モルグモルマルモのドラマーで、カフェタイガーのオーナー深田さんと、株式会社坂ノ途中のマーケターの松田さんに、野菜について対談していただきます。
野菜を使ったメニューをたくさん提供しているカフェタイガーと、無農薬・無化学肥料の野菜を宅配している坂ノ途中、共通点はもちろんのこと、それぞれの思いなどを熱く語っていただければと思います。
モルグモルマルモ 深田:僕なんかが喋ることあるかと思って、今日は野菜のプロの方が来られるので勉強させていただきます。
坂ノ途中 松田:いえいえ(笑)こちらこそ教えていただければと思います。
めぐれる:まずはお互いのお店や会社の特色について教えてください。
モルグモルマルモ 深田:特色を考えたんですけれどもうちのお店は特にここをターゲットというのを特に決めていなくて、老若男女がおなかいっぱい食べて、おいしいなって言ってもらえればいいなというシンプルなコンセプトでやっています。
その中でもお野菜をいっぱい使っていたりもします。
坂ノ途中 松田:お野菜はサラダ系とか多いんですか?
モルグモルマルモ 深田:サラダはそんなにないんですけれども、カレーがあったり後はグラタンやドリア、メニューにも野菜は何かしら欠かせない存在ですね。
それでさっきも言ったんですけれども「おなかいっぱいになっておいしいなって言ってもらえる」のが目標であり、目標がこの店の特色になればいいかな、と。
めぐれる:カレーは野菜カレーを出されていますよね?
モルグモルマルモ 深田:カレーはチキンカレーと京野菜カレー、あと麻婆豆腐カレー丼というのがあります。(一同おおーと麻婆豆腐カレー丼に食いつく)
あと、カレーは元になるものを作っていてそれが「野菜の重ね煮」なんですけれども、その重ね煮とたくさんのスパイスを混ぜたカレーペーストを合体させてカレーを作っていく感じです。
その重ね煮とペーストを作るのに5〜6時間はかかります。
たいてい仕込みの時はそこのキッチンで夜中泣きながら仕込んでいます…。
(一同笑い)
めぐれる:野菜の重ね煮とは具体的にどんなもの?
モルグモルマルモ 深田:名前の通りいろんな野菜をピシッと隙間なく詰めて重ねていき、最後に根菜類でフタをしてむすんですけどそれをホーロー鍋に入れて水分は足さずに弱火で火を入れていきます。
その野菜の重ね煮とさっきのスパイスのカレーペーストを合わせたものがチキンカレー、野菜カレー、麻婆豆腐カレー丼のベースになっています。
そこまでを僕がやって、お客さんに出す時の仕上げは妻が作るんです。僕が目立たない、地味な、ベースを作っています(笑)
なのでカレーには一番野菜が使われていますね。
坂ノ途中 松田:カレーってけっこう野菜溶けますもんね。
モルグモルマルモ 深田: そうですね、もうドロドロに溶けてますね。
コンセプトは「百年先も続く農業を」
坂ノ途中 松田:うちは坂ノ途中という会社名が少し変わっていてあまり覚えてもらえないんですけれども。
よく「さかもと」と聞き間違えられたり「坂の上の途中」とか言われたりしていますが……。
会社のコンセプトとしては「百年先も続く農業を」というのをメッセージに掲げて野菜を販売しています。
具体的に「100年続く農業」というところなんですけれども、今も世界中で野菜は作られていますが今まで農薬を入れたりとか焼き畑をしてしまったりして使えなくなってしまっている農地が一定量ありまして、その農地が現役の農地よりもはるかに多いんです。
なのでそういう農法を続けていたら100年先には農地はなくなってしまうんじゃという思いがあって、農薬や化学肥料を使わない、良い状態の土を残して農業を支えようというコンセプトで始まった会社です。
なので栽培期間中は農薬、化学肥料を使わない野菜を販売しています。
で、これは結果的になんですけれども、農家さんっておじいちゃんおばあちゃんがやっているイメージですが「オーガニック」の野菜を育てたい人って、これから新しく就農される方、農業を初めたい若い方が多いんです。
なので農薬化学肥料使わない農家さんを探し求めていたら結果的に若くて新しく農業を初めた農家さんが多いんです。
めぐれる:年齢的にはおいくつぐらいの方が多いのでしょうか?
坂ノ途中 松田:今契約している150軒くらいの農家さんは8割位は新しく農業を初められた方で30代〜40代人が多くて去年まで東京でサラリーマンをしていましたという人や、脱サラしてはじめましたという方がたくさんおられます。
あと「オーガニックの野菜」っていうと形が悪かったり虫がついていたりっていうイメージがあると思うんですけれどもけっこうみなさんきれいな野菜を作られていて。
今まで農業がしたくてしたくてたまらなかった人たちなのですごく勉強されていてめちゃくちゃ働き者の方が多いんです。なので本当に出来てくる野菜はすごくきれいなんです。
でも「今年から農業始めるぞ!」て初めたところで農業って天候悪化などで収穫量が予測できないんですよね、それでどうしても大口の流通に乗ることができないんです、新しく就農された農家さんは。
そういう、小口の農家さんら少しずつ、天候が悪くて収穫数が少しでも、件数をたくさん集めることによって会社の中で野菜不足を起こさない、という販売方法をしています。
なのでひとつの野菜セットをとってみても農家さんが全部違う、ということがほとんどです。
めぐれる:全国から集めてるんですか?
坂ノ途中 松田:今は西日本中心です。元々は京都から始まって、じわじわと広げていってる感じで時期によっては九州や屋久島の農家さんもいらっしゃいます。
モルグモルマルモ 深田:そういう農家さんはどうやって探してるんですか?
坂ノ途中 松田: 今まではこちらから必死になって探すということはなくて、新規就農された方って土地土地でそういうコミュニティができるんですよね、自然と。
なので「あそこ野菜買ってくれるよ」みたいな口コミで広がっていくことが多いです。
「紹介するわー!」という感じで。
田舎のほう行くとなんとなく若い方ってつながっていたりしますよね?そういうネットワークなんですけれども。
「なんじゃこりゃ???」な野菜が、逆にお客さんには喜んでもらえたりする
坂ノ途中 松田: うちと取引がある農家さんは、若い人たちが多いので変わった野菜とか多いんです。
カラフルなものも多くて、セットにした時にすごく見栄えもいいんですよね。
ブラジル人の方がおられるんですけど、日本に移住してきて「妻と一緒に働ける方法はなにか?」って考えたら農業だった、という方がいらっしゃって。
その方がブラジル野菜を育てて送ってこられて開けてみて「なんじゃこりゃ???」みたいな(笑)
ブラジルでは一般的な野菜なんですけどこちらからすると「日本で売れるのかな?」て思うんですけれども逆にお客さんには喜んでもらえたりします。
めぐれる:わたしも料理好きで変わった野菜も好きで新しい見たことのない野菜を見るとついつい買うんです。今ってたいていネットで調べるとレシピ出てくるじゃないですか。
坂ノ途中 松田: ぜひ、ブラジル野菜しらべて見てください。「マシシキュウリ」って言うんですけれども……(検索して画像を見せる)トゲトゲで爆弾みたいな形なんです。
<写真は坂ノ途中のブログよりお借りしました>
(一同おどろく)
モルグモルマルモ 深田:味はどんなのですか?
坂ノ途中 松田:ちょっと酸っぱい、瓜みたいな感じです。
うち、基本的におまかせセットにして詰め合わせてるんですけれども、これを入れる時はさすがにドキドキしましたね。
「こんなんどうやって食べるの?」ってクレーム来たらどうしようかと(笑)
モルグモルマルモ 深田:就農される方はが増えて、野菜の種類も年々増えているんですか?
坂ノ途中 松田:そうですね、若くで就農される方が増えているので。
一般的な普通の野菜がほとんどなんですけれども、今で扱ってる野菜の種類は400種類くらいですね。
UターンIターンで田舎に帰ってきて仕事をするとなるとあまり就職先がなくて農業を考えられる方も多いです。
最近は行政もそういう方を応援して補助金を出されているところも多いので。
モルグモルマルモ 深田:それは聞いたことありますね。
若い人に農業を盛り上げてもらおうとどんどん補助金を出すっていう話。
カフェ出す人にはすごく厳しいんですけど(笑)
坂ノ途中 松田:過疎化、高齢化で空き農地もすごく増えているのでそういうのを活かしたいっていうのもあるんですね。
そのまま放置していると雑草だらけになって近隣から苦情もくるのでお金もかかってしまう。
めぐれる:ニュースにもなっていますよね、耕作放棄地。
坂ノ途中 松田:放置している期間が長ければ長いほど、元の農地に戻す作業も大変なんです。
そこでもまたお金がかかってしまうので。
(今年の冬は野菜の価格が)本当に高かった……「ウッ!」ってなるぐらい高かった……
めぐれる:今期とか天候不良で野菜の高騰とかすごかったじゃないですか。やっぱりそれで入荷とか変わったりしましたか?
モルグモルマルモ 深田:本当に高かった……「ウッ!」ってなるぐらい高かった……
坂ノ途中 松田:そうですね、多少は減ったりしましたけれども前述の通り、たくさんの農家さんから少しずつ仕入れているので。
たとえばはじめのうちは京都の農家さんだけだったんですけれども。
自然災害があるとそれで入荷ができなくなってしまう。
あと気候が一緒なので野菜の種類が偏ってしまう。
でも今は少しずつ広がったことによって鹿児島からは少し早めに新玉ねぎが入荷する、鳥取は長雨が続いたけれども他の地域は大丈夫だった、などで安定した入荷、安定したコストでの販売ができます。
<後編につづきます>