018年5月末に発行した紙のめぐれるの裏表紙に掲載されている、カフェタイガーの店主、モルグモルマルモ深田さんと、野菜の通信販売をしている、株式会社坂ノ途中のマーケター松田さんの対談。
とてもアクセスが多くて、野菜ひいては、食べることに興味のある方がいかに多いか改めて気付かされました。
後編も食の安全についてや、野菜の美味しい食べ方などあれこれ聞いています。
<前編はこちらから>
なるべく体にいいものを出したい、安全なものを出したい
めぐれる:カフェで提供されておられるメニューは、やはり食の安全について考えておられますか?
モルグモルマルモ 深田:野菜なら国産野菜、他の食材については添加物がたくさん入っている物は避けるなどですね。
なるべく体にいいものを出したい、安全なものを出したい、値段の折り合いがつくようにと思いながら。
毎日買い出しに行くのでその辺は気にしながらスーパーに行くんですけれども。
なので今日はその辺を坂ノ途中さんに教えていただこうと思って(笑)
坂ノ途中 松田:そうですね、お客様にもよく「安心安全な野菜を選びたい」と言われるのですが安心安全ってその人によって基準が違うじゃないですか?
うちの場合、農薬、化学肥料を使わないっていうのは環境負荷をかけないというところをこだわっています。
なのでそこにそぐわないものは取り扱わないということにしているんですけれども。あと安心安全を言い過ぎると逆に怖くなると思うんですよ。
せっかくのおいしい物を「安全じゃないかも知れない」って思いながら食べるのってしんどくないですか?
お客さんの中にもすごく気にする方がいらっしゃって、種は何を使っているの?っていう。
種にもF1種とか固定種というものがあって。
ずっと自分のところで作っている野菜をそこから種を取ってまだ次に植える、という形で何年か経つと「固定種」になるんですけれども、その種を科学的に組み合わせたものなどを使っていたら嫌だという方とかいらっしゃいます。
モルグモルマルモ 深田:えー!種から気にするってもう食べるものなくなってくるんじゃないですか!
坂ノ途中 松田:そうなんですよね、食べるものの選択肢がすごく狭いと思います。
なのでうちの場合、これをしているから安心安全!という明確なものではなく、お客さんから聞かれたことには全部答える、これが安心安全なのではないかな、と思っています。
モルグモルマルモ 深田:今までで種のこと以外で「え?そんなこと聞くの?」ってどんなことがありました?
坂ノ途中 松田:正直めちゃくちゃありますよ。オーガニック云々については。
さっきの種の話もそうですし、肥料のこともあります。
動物性の肥料は使っていないか、とか。化学肥料は使わないですけれども、油かすや鶏ふんなどの肥料は使うんですよね。
そういうのもベジタリアンの方では気にされる方もいらっしゃるんですけど、それはその方たちの「こだわり」であって正しい知識かって言われるとそうでもないことも多いんですよね。
めぐれる:ああ、なるほど。
坂ノ途中 松田:あと最近困ったなあと思ったのは、農薬を落とす洗剤が売っていたりするんですよね、貝殻が原材料っていう洗剤で。
それをうちで買った野菜に使ったお客さんがいて「おたくで買った野菜、すごく油が出るんですけど」っていう問い合わせがあって。
貝殻の成分って「強アルカリ性」らしくって。元々野菜って脂分があるんですよ、それをその強アルカリで野菜の細胞膜を破壊してしまって溶け出してというか野菜自体を溶かしてしまってるんですよね。
お客さんはその洗剤を信じ切っていて、そこでこの野菜も油が出る、こっちも出るってなってしまったらおいしい野菜も食べられなくなって逆に不健康になるとおもうんですよね。
めぐれる:小さいお子さんがいらっしゃるご家庭とか気にされたりするんでしょうか。
坂ノ途中 松田:そうですね。あとけっこう年配の方も気にされる方多いです。
モルグモルマルモ 深田:うちもあります、これは何を使っているの?って聞かれることが。
なので自分が仕入れているものはそれを想定して答えは用意しておきますね。
細かいものがたくさん入っているスープなんかもよく聞かれます、何を使っているの?っていうのを。
その聞き方でなんとなく「ああ、魚類肉類を避けているのかな?」って思うとナンプラー使ってます、とか先回りして答えたいっていうのは考えています。
坂ノ途中 松田:「誠実」ですね。
モルグモルマルモ 深田:そうですね、誠実…真心の話をしてしまいましたね……
(一同笑い)
味はもちろんのこと、見た目も楽しめるところが野菜の魅力
めぐれる:野菜の魅力って何だと思います?個人的な見解を聞かせていただければと。
モルグモルマルモ 深田:僕が思う野菜の魅力とは、それぞれが個性が強い、色んな種類、それこそ数え切れないほどあるのにちゃんとひとつひとつにブレなさがあるというか。
そういう個性の強いところに魅力を感じますね。
(坂ノ途中のパンフレットを見ながら)あとこうやって詰め合わせになってると色とりどりでかっこいいじゃないですか!
戦隊物やバンドみたいな、見た目にも楽しめるところって野菜の魅力だなあと今日改めて思いましたね。
坂ノ途中 松田:そうですね、愛おしいというか、かわいいしかっこいい。
なんでこんな形しているの?とかね。
モルグモルマルモ 深田:あと旬のものとかってすごいじゃないですか。
「ああ!これ旬だからいつもよりおいしい!どうした!」みたいな(笑)
坂ノ途中 松田:あと野菜ってほんとうに種類豊富じゃないですか。
お肉なら牛肉、豚肉、鶏肉、あと少し。
でも野菜はそれこそ無限にあるんじゃないかなあというくらい。
めぐれる:はいはい。
モルグモルマルモ 深田:たしかにお肉はいろんな部位で味が違ったりしますけど野菜はそれどころじゃない。ガンガンくる表現者みたいな。
坂ノ途中 松田さんによる激アツなすトーク
坂ノ途中 松田:いろんな農家さんから少しずつ仕入れているのもあって、たとえばナスでもAからは20本、Bからは50本、Cからは30本、みたいな。
でも近くの農家さんでも同じ品種でも農家さんによって味や見た目も全然違うんですよね。
あとさっき「旬」の話が出てたんですけれどもたとえばナスでも出始めの時と旬の時と名残り物の時期があるんですけれども、それだけで全然味が違うんです。
めぐれる:へえ〜
坂ノ途中 松田:わたし今の会社に来る前は東京で勤めていて、スーパー言ったら年中いつでもナスは売っていてナスってこういう大きさでこれくらいの値段でこんなもんっていうなんか「工業製品感」ってありますよね。
モルグモルマルモ 深田:なんとなくわかります。
坂ノ途中 松田:きゅうりってだいたいこの大きさでとかじゃがいももたいていこれくらいの値段で、とか。
でもこの会社に入ってから思うのは「野菜って生き物だな」ってすごく思います。
ナスは出始めの頃は生でもみずみずしくておいしいし、旬の時はとろけるくらい何にしてもおいしいし、季節の最後の方になってくると種を残そうと皮が分厚くなってきて。
でもその分うまみがぎゅっと詰まっているので皮をむく焼きなすなんかにするとすごくおいしい。
そういう、季節の移り変わりで味が変わってくるのがすごくおもしろいです。飽きないですね。
モルグモルマルモ 深田:生きている食材だなって改めて思いますね。
坂ノ途中 松田:そうです、なので天気予報も全国的に気にするようになって、島根とか長雨が続いているなあと思ってるところに野菜が届いたらやっぱりちょっと水っぽい。
梅雨の時期もやっぱり何を食べても少し水っぽいなあとか。
乾燥したらトマトって割れるんですけど。
別に割れることは悪いことではないんです。
乾燥した後に雨が降ると渇いた分溜め込もうとして皮は割れるんですけどそういうのを見ると「ああ、水分溜め込もうとがんばってたんやなあ」とか思います。
割れてしまうと売り物としてはカビが生えやすくなるのでよくはないんですけど。
そういう天候によって味も見た目も変わるところとか、おもしろいです。
野菜をおいしく食べるコツは「知ってる」ということ
めぐれる:そんな野菜をおいしく食べるコツってありますか?
モルグモルマルモ 深田:コツとはちょっと違うんですけれども「体が野菜を求めてるな」って思うことってあると思うんです。
そういう時ってたいていほわわわーんと浮かんでくるものって「旬の食べ物」だと思うんです。
それが美味しく食べるコツと言うかそういうことなのかなあって。
めぐれる:そういう体になっておかないと気付かないていうのもありますよね
モルグモルマルモ 深田:そうですよね、そういうことに鈍感だと……
僕は毎日買い出しに行くので「ああ、いいなぁ食べたいなあ」とか「これ出てきた、そんな季節かあ」とか思いながら店用とは別に、自宅用に買って帰ることが多々あります。
勝手に食べたくなるというか、そしてそういうものって旬のものなんですよね。
めぐれる:春の旬のお野菜とか…豆ごはんとか菜の花とかおいしいです。
坂ノ途中 松田:まずおいしく食べようと思ったら「知ってる」ってことはすごく大事ですよね。
めぐれる:子供の頃とか若い頃って野菜の旬なんて気にして生きていませんでしたよね
モルグモルマルモ 深田:僕若い頃なんてすいませんけど正直肉のことしか考えてなかったですよ。
バーベキューなんかしても「野菜などいらぬ!肉!肉!」みたいな。
その頃の無知な自分を殴ってやりたいですね。
(一同笑う)
坂ノ途中 松田:うちの会社、お昼はまかないなんですけれども野菜しかないんですよ。
ちょっと見た目が悪い野菜とか、これから提携する農家さんのお野菜の試食も兼ねたりして。
まかない担当のスタッフがいていつも20人分くらい作るんですよ。
なのでスタッフは1日野菜の出荷して、お昼はまかないの野菜料理を食べて、1日野菜まみれなのでスタッフみんなで外食すると反動ですごくお肉食べますよ(笑)
この間も会社の後輩とごはんに行くことになって何が食べたいって聞いたら「肉!肉が食べたい!」というので肉バルに行ってきました。
何でもそうですけどバランスって大事ですよね。
虫がついている野菜は、おいしいっていうこと?
めぐれる:今年の冬(2018年初冬)は野菜が高くて大変でしたよね。
モルグモルマルモ 深田:ほんとに野菜高くてずっと「ウッ!」てなってましたよ、このシーズン。
最近すこしづつ落ち着いてきてますけどね。
坂ノ途中 松田:冬の葉物野菜の種まきって9月あたりが多いんですよ。
でも去年はちょうどその時期に大きな台風が2つも来てしまって。
雨で種が流されてしまったりして。それが影響しましたね。
モルグモルマルモ 深田:うちもお食事には全部サラダとスープが付くんです。
サラダは今だったら白菜と水菜と人参をいい大きさに切ってスパイスをドレッシング代わりに混ぜて出してるんです。
でもこのシーズンは本当に高くて血の涙を流しながら提供してました……
坂ノ途中 松田:中身の野菜の種類は変えなかったんですか?
モルグモルマルモ 深田:変えようとも思ったんですけど結局安定してある、取れ高が多い野菜となるとやっぱり白菜かキャベツかになってしまうんですよね。
こればっかりは天候のことなのでどうしようもないんですけどね。
坂ノ途中 松田:変な言い方ですけど、野菜高いな、で終わらずこれをきっかけに「野菜は工業製品ではない」ということ、なんで高くなったのかを消費者側が考えるきっかけになるといいですよね。
うちは今回価格は変えていないんですけど、やっぱりお客さんから「まわりのスーパー高いわー」というのを聞くとスタッフがさっきのような話を説明していましたね。
モルグモルマルモ 深田:そうやって、ちょっとずつ知ってもらうしかないですよね。
めぐれる:やっぱりみんな知っていないってことですよね、それだけ。
坂ノ途中 松田:そうですね、クレームの内容ももちろん商品が悪ければ交換しますがたいてい似たような内容だったりしますね。
たとえば虫がついていたりしてもお客様によって反応は違いますし。
めぐれる:虫がついていたらそれだけおいしいものって思うんですけど、そうじゃない人もいますか?
坂ノ途中 松田:根本的に虫がいや!だめ!っていう方はけっこういらっしゃいますけど、坂ノ途中のめちゃくちゃファンの方は「虫がついてました、それを育てたら蝶々になりました!ありがとう!」みたいな問い合わせももらうんですよ。
本来は虫がついていたら食べられない部分があるだろうということで交換するんですけれども「素敵な春をありがとう」って言ってもらえてどれだけよいお客さんなんだと。
このお客さんだけじゃなくて「都会では虫も見られないから子供が喜んでいました」とか言ってくださるお客さんも一定数いらっしゃるんです。
モルグモルマルモ 深田:心が豊か!心がきれい!!!
おれ前に白菜からムカデ出てきたんやけど…育てたらよかったかな……
めぐれる:ムカデ!あぶないですね。
坂ノ途中 松田:でもちゃんと有機農法でやっていると虫はつくんですけど、変な害虫はつかなかったりするんですよ。
周りにこの雑草を植えておくとこの虫がつかない、みたいな。
なのでいい状態の畑にいる虫って青虫とかバッタとか、いい虫しかいないんですよ。
モルグモルマルモ 深田:じゃあ、僕の白菜のムカデはいいところで育ってないですね……
坂ノ途中 松田:ムカデは聞いたことないですね(笑)
なのでうちでは基本的には「虫はいてもいい」というスタンスではやっています。共存していきましょうっていう。
得意料理とかおすすめメニューとか
めぐれる:おふたりの得意料理、おすすめメニューはなんですか?
野菜がメインじゃないお料理でも大丈夫なので教えてください。
モルグモルマルモ 深田:それ、お客さんにもよく聞かれるんですけど……気持ちは全部なんです!
本当は!
でもどれかひとつって聞かれるとやっぱりカレーをおすすめしています。
でも最近メニューに加わった「汁なしタイガー麺」っていうんですけどこの前台湾旅行に行った時に絶対ルーローハン食べようって思ってたんですけど他にも食べたいものがありすぎてすっかり忘れて帰ってきてしまって。
日本に帰ってきてどうしても食べたい、メニューにしたいということで出そうと思ったんですけど「ちょっと待てよ、これは麻婆カレー丼とキャラがかぶるな」ってことになって。
それで麺屋さん探しから始まって試行錯誤して麺にすることになったんです。
ラー油も花椒ラー油を自家製で作ってます。徐々に広がればいいかなということで。
めぐれる:めっちゃ食べたい!!!
坂ノ途中 松田:わたしもけっこう料理が好きで色々作るんですけれどもここ1年くらいはまっているのは「ナスのステーキ」ですね。
わたし本当にナスが好きでナスの話しかしてませんね。
うちの社員、やっぱり「一番好きな野菜はなんですか?」って聞かれることがおおいんですけど社員の半分くらいがナスって答えますね。
それぐらいナスってバリエーションがあっておいしいんです。
パンフレットにも載ってますが白ナスとか緑ナスっていうのがあって、すごくかわいいんですよ。
うちは鳥取の農家さんが作って送ってきてくれるのがものすごく大きくて立派で勝手に商品名を「立派な白ナス」にしたんですよ。
この立派な白ナスをぶ厚めに切って、多めの油でゆっくりじっくり弱火で焼くだけなんですけど……
少しお塩かけて食べるともうやばいくらいおいしいです。
めぐれる:それは……ものすごおく美味しそうですね。